週1〜2時間程度の運動と、精神疾患による長期休業の関連。日本の労働者約3.8万人を追跡した研究
日本の労働者を平均9.2年間追跡し、余暇の身体活動と精神疾患による長期疾病休業との関連を調べた研究を読み解きます。
何が発表されたのか
日本の労働者38,120人を平均9.2年間追跡した研究で、余暇に身体活動をしていない人と比べ、週3.75〜7.5MET時未満の活動を自己申告した人では、精神疾患による30日以上の長期疾病休業との間にハザード比0.72という関連が観察されました。これは統計上の関連を示す結果で、運動が長期休業を防ぐ、または精神疾患を予防することを示したものではありません。
どんな人を、どのくらい追跡した?
横浜市立大学、国立健康危機管理研究機構(JIHS)などの研究グループが、職域多施設研究J-ECOHスタディの20〜59歳の労働者を対象に行った前向きコホート研究です。主に2011年の健康診断時に身体活動を尋ね、2012年から2024年まで追跡しました。38,120人のうち男性は32,298人で、平均追跡期間は9.2年でした。その間に1,032人(2.7%)が精神疾患による長期疾病休業を経験しました。
この研究でいう「長期休業」とは?
ここで扱った長期疾病休業は、病気を理由に30日以上連続して仕事を休むことです。精神疾患による休業かどうかは、治療を担当した医師の診断書に記載された診断をもとに把握しました。日々の気分の良し悪しや、短い欠勤の回数を直接調べた研究ではありません。
余暇の身体活動と、どんな関連があった?
余暇に身体活動をしていない人を基準にすると、週3.75〜7.5MET時未満の群では、精神疾患による長期疾病休業のハザード比は0.72(95%信頼区間0.55〜0.93)でした。大学の発表では、この量をおおむね週1〜2時間程度の運動の例として説明しています。ただし、時間だけで決まる量ではなく、活動の強さも含めた目安です。ハザード比0.72は、この研究の条件で比べたときに長期休業が起きた割合に差があったことを示す統計値であり、「28%予防できる」という意味ではありません。
MET時って何?
METは身体活動の強さを、安静にしている状態を1として表す単位です。MET時は、その強さに時間と頻度を掛け合わせた1週間の活動量の目安です。例えば大学の説明では、早歩きや筋力トレーニングにあたる4MET程度の活動を15分ずつ週4回行うと、4MET時/週になります。同じ1時間でも、活動の強さによってMET時は変わります。
仕事中に体を動かす人では?
仕事中の身体活動についても、座り仕事中心の人と比べて、立ち仕事、歩き仕事、かなり体を動かす仕事の順に、精神疾患による長期疾病休業との関連が低い方向にみられました。かなり体を動かす仕事の群ではハザード比0.50(95%信頼区間0.37〜0.69)でした。ただし、これは仕事で体を動かすほど健康によい、あるいは身体的に負担の大きい仕事を増やすべきだという結論ではありません。
普通の暮らしとどうつながる?
運動不足が気になっていても、毎日まとまった運動時間を取るのは難しいものです。この研究は、必ずこの時間だけ運動すればよいと示したものではありません。その一方で、余暇に少し体を動かしている働く人の集団で、長期休業との関連を調べた日本のデータとして、運動を『十分にできるか、全くできないか』の二択で考えず、自分の生活の中で無理なく動ける場面があるかを考えるきっかけにはなります。心身の不調や仕事を休むことへの心配がある場合は、運動だけで解決しようとせず、職場の相談窓口や医療機関など適切な相談先を利用することが大切です。
注意点・情報の限界
- 観察研究なので、身体活動そのものが結果の違いを生んだという因果関係は分かりません。
- 身体活動は主に2011年に自己申告で測っており、追跡中の変化も十分には反映できません。
- 参加者は男性が大多数で、主として一つの大企業に勤務する人でした。女性、中小企業、サービス業などを含む全ての働く人に同じ結果が当てはまるとは限りません。