情報確認日:2026-09-10
熱い飲み物の温度と食道扁平上皮がんの関連を調べた977,282人の研究を読み解く
飲み物を熱めに飲むと答えた人ほど、食道がんの一種である扁平上皮がんの発症リスクが高い関連が見られました。別の種類の腺がんでは、温度について同じような関連は確認されませんでした。
飲み物を熱めに飲むと答えた人ほど、食道がんの一種である扁平上皮がんの発症リスクが高い関連が見られました。別の種類の腺がんでは、温度について同じような関連は確認されませんでした。
毎日お茶やコーヒーを飲み、熱さが気になる人に関係する研究です。飲み物の種類だけでなく、飲むときの温度に目を向ける材料になります。Cancer Research UKは気になる場合に少し冷まして飲むことに触れていますが、この研究では何分待てばよいかは調べていません。
今回の倍率を、自分の飲み物の温度や発症確率にそのまま置き換えないことが大切です。何度なら安全か、何分冷ませばよいかは、この研究の数字だけでは決められません。
2026-09-08に公開された報告です。 英国の二つの集団で、飲み物の温度の好みを尋ね、その後の食道がんの発症記録を追った前向き観察研究です。飲む温度を割り付けた試験ではありません。 合計977,282人です。Million Women Studyの510,112人とUK Biobankの467,170人を解析しました。前者は女性の集団で、後者には男性も含まれます。 著者はKeren Papier、Kezia Gaitskell、Sarah Floud、Gillian K. Reevesです。所属・発表主体はオックスフォード大学の研究グループ。責任著者はNuffield Department of Population HealthのCancer Epidemiology Unit所属です。
追跡中の出来事の起こりやすさを比べた統計値。ここでは「ハザード比」と表しています。 平均追跡期間はMillion Women Studyで14.2年、UK Biobankで11.1年です。食道がんは計2,348件で、扁平上皮がん1,045件、腺がん1,303件でした。出版社の初公開日は2026年9月8日、Cancer Research UKの公式解説は9月9日です。 お茶・コーヒーを普段どの程度の温度で飲むかをwarm、hot、very hotから自己申告し、1日の杯数も尋ねました。飲料の温度は実測していません。NHSの記録で発症を追跡し、がんの種類を分けて解析しました。Cox回帰で求めたハザード比を論文ではRRと呼び、二つの集団の結果を推定精度に応じて統合しました。喫煙や飲酒などの条件を考慮し、温度と杯数を互いに調整した解析も行っています。
推定値の不確かさを示す範囲で、個人の変化の範囲ではありません。ここでは「95%信頼区間」と表しています。 飲む杯数を考慮した解析では、warmと比べた扁平上皮がんのRRはhotで1.69(95%信頼区間1.36〜2.11)、very hotで3.17(2.49〜4.03)でした。これは集団間の統計的な関連です。 腺がんについて、very hotとwarmを比べたRRは0.92(95%信頼区間0.76〜1.12)で、温度について明確な関連は確認されませんでした。 温度を考慮して1日6杯以上と6杯未満を比べると、扁平上皮がんのRRは1.71(95%信頼区間1.51〜1.94)でした。論文は温度だけでなく杯数との関連も調べています。お茶・コーヒーの成分そのものが原因だと示した研究ではありません。 発症件数は二つの集団全体の実数です。追跡期間や年齢構成などが異なるため、単純に割った割合を個人の生涯リスクとは扱えません。Cancer Research UKが示す英国の生涯リスク約1%も、この研究のwarm群の発症確率ではなく、3.17を掛けて個人の確率を求める数字ではありません。
扁平上皮がんと腺がんは、食道がんの異なる種類です。今回の温度との関連は、食道がん全体へ一括して広げられません。 RRはこの論文ではCox回帰のハザード比を指します。基準集団との比較であり、3.17は発症確率3.17%という意味ではありません。95%信頼区間は推定値の不確かさを表します。
資金提供:Million Women StudyはCancer Research UKと英国Medical Research Councilが資金提供。著者へのOxford大学フェローシップ、UK Research and Innovationの支援も記載されています。資金提供者は研究設計、収集・解析、発表判断、原稿作成に関与していないと記載されています。 利益相反:著者らは利益相反なしと申告しています。
- warm、hot、very hotは本人の感覚による回答です。感じ方は人・集団・時期で異なり、実際に何度で飲んでいたかは分かりません。 飲む温度と杯数は主に一時点の回答です。発症前の症状が回答や飲み方に影響した可能性も残ります。最初の5年を除いた解析でも似た結果でしたが、観察研究である点は変わりません。 IARCの65℃超という既存評価と、今回の自己申告による温度区分は別です。65℃という値が安全・危険を分ける境界だと示した研究でもありません。 英国の集団の結果から、日本の一人ひとりの発症確率は決められません。Cancer Research UKは、扁平上皮がんへの対策として、たばこを吸わないことと飲酒を減らすことが重要だと説明しています。温度だけでリスク全体を判断する話ではありません。 熱いお茶を飲むとがんになる、と断定した研究ではありません。自己申告の温度なので、何度なら安全か、何分冷ませばよいかも分かりません。